『精密』大腸内視鏡検査とは
見落しのない精度の高い観察を行うには、以下の『9ヶ条』を厳守する必要があります。いずれも基本的な注意事項です。しかし、基本を忠実に守って検査を実施している内視鏡医は残念ながら極少数です。特に大学病院クラスの患者数が非常に多い施設では『数をこなす』必要があるため、流れ作業的な検査を実施せざるを得ないのが現状です。
大腸内視鏡検査は『高い集中力』と『高い意識(情熱)』を持って検査をしなければ見落しの多い検査になります。
当院では『患者さん1人あたり1時間の検査時間』を確保しているため、ゆっくり時間をかけて丁寧な観察が可能です。
『観察時間とポリープ発見率は正の相関を示す』ことが証明されています。
つまり時間をかけて丁寧に観察すれば見落しのリスクが低くなるのです。逆に時間をかけずに短時間でササッと観察した場合には見落しのリスクが高くなります。
当院では決してベルトコンベアー式の流れ作業的な検査は行いません。
また、大腸内視鏡検査は全て院長が責任をもって担当しますのでご安心下さい。
『精密』大腸内視鏡検査 9ヶ条
- 01完璧な腸管洗浄 (前処置)
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便が少しでも残っていると小さな病変が便に隠れて発見出来ません。精度の高い検査を行う上で、最も大切な事項となります。『前処置の良し悪しが検査精度を決定づける!』と言っても過言ではありません。
その為、当院では完璧な腸管洗浄が可能な薬剤をセレクトして前処置を行っています。
- 02体格に応じた内視鏡機材の選択
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体重80kgの体格の大きな方には太いスコープを使用し、体重40kgの小柄な方には細いスコープを使用します。体格の大きな方の大腸は、おなかの中で緩やかな大きなカーブを描くことが多いため、回転半径が大きいスコープが適します。
一方、小柄な方の大腸は屈曲蛇行が強い傾向にあるため、回転半径の小さな小回りのきく細いスコープが適します。
- 03死角を無くすための『体位変換』をこまめに実施
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体の向きを左右へ変換することで、腸管内の空気が移動して観察しやすくなります。体位変換は手間隙がかかりますが、この作業を怠ると見落しのない検査は不可能です。その為、当院では声をかけると目が覚める程度の軽い鎮静状態(意識下鎮静)で検査を実施します。過度な麻酔(深い鎮静状態)だと体位変換が出来ません。
- 04先端フードの装着(必須)
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ヒダの裏側(ヒダ裏)は普通に観察するだけでは、絶対に観察出来ません。ヒダ裏を観察するにはスコープの先端に透明なフードを装着してヒダをめくるような操作が必要です。見落しのほとんどは、ヒダ裏の死角部分で発生します。
まっすく正面に見える病変を見落とすことはありません。
- 05同じ部位の往復観察
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スコープ挿入時と抜去時では空気の入り具合や腸のポジションにより、同じ部位でも見え方が全く異なります。同じ部位を2度も3度も入れたり抜いたりすると、見え方がどんどん変わり、平坦な病変の発見率が高くなります。
- 06インジゴカルミンによる色素内視鏡
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人体に無害な青い色素(インジゴカルミン)を大腸全体にまんべんなく散布して観察します。
この方法は非常に手間と時間がかかりますが、平坦病変や陥凹性病変の検出率が飛躍的に上がります。時間とコストがかかるため、全例インジゴカルミンを散布している施設は日本でもごくわずかです。
- 07白色光とNBI による観察
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NBI という特殊光を用いて観察することで腺腫発見率(ADR)が高くなります。
一方、白色光(自然な色合い)で観察することで、特徴的な色調を呈する神経内分泌腫瘍(NET)などの粘膜下腫瘍を発見することが可能です。
- 08腸管を十分に伸展させた観察
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通常、内視鏡を大腸の一番奥の盲腸まで挿入する際は空気を完全に抜いて大腸を折り畳み、短縮させて挿入します。したがって、内視鏡を盲腸まで挿入する時には観察出来ません。詳細な観察は内視鏡を盲腸から抜きながら空気を入れて腸管を風船のように膨らませて観察します。つまり、観察する時には意図的に腸を伸ばす訳です。ヒダとヒダの間を完全に伸ばして観察しないと見落しの原因になります。もちろん、過度に腸を伸ばし過ぎると痛みが出るため、経験に基づいた微妙なさじ加減が必要です。
- 09上行結腸と直腸の反転操作
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上行結腸はヒダの丈が非常に高いうえに、見落しやすい平坦なポリープが出来やすい部位です。また、直腸と肛門の境界部分は正面視できないため、病変の見落しが発生しやすい部位です。
腸管の太さにもよりますが、安全に反転操作が可能な場合は必ずスコープを反転させて死角にポリープが隠れていないかチェックします。腸が細くて反転出来ない場合は先端フードで丁寧にヒダ裏をチェックします。