私は大腸内視鏡検査の観察に平均30分かけて大腸の中を見落しが無いように丁寧に観察しています。(当院では鎮静剤を使用してウトウト眠っている状態で検査を行うため、検査時間が長くなることによる不快感はありません)

何度も体の向きを右や左に体位変換しながら大腸全体にインジゴカルミンという色素をまんべんなく散布して色素内視鏡観察を実施します。結果的に盲腸から直腸まで詳細に観察すると、だいたい30分経過しているといった感じです。

慌てず、ゆっくり丁寧に観察して平坦病変や陥凹性病変の検出率を高めています。

25年間、大腸カメラをライフワークとして行ってきた結果、「観察時間30分」が現状ではベストと考えています。

「見落しの無い観察をするにはどうしたらいいか?」を常に考えながら、日々大腸カメラに取り組んでいます。

大腸カメラは胃カメラとは違って、かなり「感覚的」な側面の強い検査です。それ故にいくら専門書を繰り返し読み込んでも、実際に高いモチベーションをもって実践を積んでいかなければ、いつまでたっても達人の域に達することは出来ません。

AIは画像診断の補助としては非常に優れていますが、モニターに映らない病変は見つけることができません。つまり、見落としのない丁寧で繊細な内視鏡操作が出来なければ、AIがいくら発達しても見落としゼロにはなりません。

私はこれからも大腸カメラ『職人』として、さらに腕を磨いて参ります。

<注>「観察時間」とは内視鏡を盲腸まで挿入してから直腸まで抜きながら観察してくる時間のことを指します。「挿入時間」とは最初に内視鏡を肛門から盲腸まで挿入する時間を指します(私の場合、挿入時間は大体2〜3分程度です)。通常、内視鏡を盲腸まで挿入する時には腸管内部の空気を完全に吸引して腸管を虚脱させるため、詳細な観察はできません。逆に、観察の際には腸管に空気(炭酸ガス)を送気して大腸を風船のように膨らませながら観察します。

院長 安藤祐吾